
2025年、年金制度に大きな変化が起こります。年金額の1.9%増額をはじめ、在職老齢年金の基準額変更、遺族年金の改正など、あなたの老後資金に直結する重要な制度改正が実施されています。本記事では、これらの変更があなたの将来にどのような影響を与えるのか、具体的な数値とともに詳しく解説します。
年金額はどれくらい増える?2025年度の改正内容
2025年度の年金制度改正により、年金額が1.9%引き上げられました。これは物価上昇や賃金変動に応じた改定で、受給者にとって朗報となっています。
国民年金(満額)の変化
年度 | 月額 | 年額 |
---|---|---|
2024年度 | 68,000円 | 816,000円 |
2025年度 | 69,308円 | 831,700円 |
増加額 | +1,308円 | +15,696円 |
厚生年金(夫婦2人標準)の変化
年度 | 月額 | 年額 |
---|---|---|
2024年度 | 228,372円 | 2,740,464円 |
2025年度 | 232,784円 | 2,793,408円 |
増加額 | +4,412円 | +52,944円 |
年金額増加の背景
この増額は「マクロ経済スライド」の仕組みによるもので、物価や賃金の変動に応じて年金額を調整する制度です。「マクロ経済スライド」とは、賃金や物価による年金額の改定率を調整して、緩やかに年金の給付水準を調整する仕組みであり、2025年度は物価上昇率と賃金上昇率を考慮し、1.9%の引き上げが決定されました。
働きながら年金をもらう人への影響は?
60歳以降も働きながら年金を受給している方にとって、在職老齢年金制度の改正は大きな影響をもたらします。60歳以降も会社などで働きながら老齢厚生年金を受け取る場合に、年金額と賃金(給与や賞与)の合計額に応じて、年金の一部または全額が支給停止される仕組みのことです。基準額が引き上げられることによって年金の支給停止が緩和され、手取り収入が増える可能性があります。
在職老齢年金の基準額変更
給与と年金の合計が月50万円を超えると年金が減額
1万円の引き上げにより、より多く働けるように
大幅引き上げで約20万人が年金全額受給可能に

社会保険適用拡大の影響
「106万円の壁」の撤廃が検討されており、これにより短時間労働者の社会保険加入が促進されます。 現在、年収が約106万円を超えると社会保険(厚生年金、健康保険)への加入義務が生じ、その分の保険料負担が発生していました。しかし、2026年10月にはこの「壁」が撤廃される予定です。これにより、新たに厚生年金への加入者が増え、将来受け取れる年金額の増加が期待できます。 その一方で、これまで社会保険の対象外だったパートやアルバイトの方も社会保険料の負担が生じることになります。
メリット
- 厚生年金加入による将来の年金増額
- 健康保険の充実
- 働き方の選択肢拡大
注意点
- 社会保険料負担に伴う手取り収入の一時的減少
- 配偶者控除への影響
- 企業の保険料負担増
将来への備え:遺族年金と基礎年金の改正
遺族年金制度の見直し
2028年4月から、遺族厚生年金に大きな変更が予定されています。最も大きな変更点として、18歳年度末までの子がいない20代〜50代の配偶者(妻・夫ともに)への遺族厚生年金の支給が、原則として5年間の有期給付となります。これまで、子のいない30歳以上の妻は原則として生涯支給されていましたが、男女平等の観点から見直されます。ただし、施行直後の2028年度末時点で40歳未満の子のない女性から段階的に適用され、段階的に対象年齢が引き上げられる予定です。また、すでに受給中の人や60歳以上で受給権が発生した人、18歳年度末までの子がいる人は影響を受けません。
主な変更点
- 男女差の解消
- 原則5年間の有期給付化
- 有期給付加算の創設(約1.3倍の給付額)
検討中の内容
- 給付水準の改善
- 財源確保の検討
- 厚生年金積立金の活用
個人でできる対策と準備
年金制度の改正を踏まえ、個人レベルでできる対策を整理しました。
すぐにできること
- ねんきん定期便で現在の加入状況を確認
- ねんきんネットでの年金見込額試算
- iDeCoやNISAの活用検討
- 働き方の見直し(在職老齢年金を考慮)
中長期的な対策
- 老後資金計画の見直し
- 生命保険の保障内容確認
- 住宅ローンの完済計画
- 健康維持による医療費抑制
家族での対策
- 夫婦の年金受給戦略
- 遺族年金改正への対応
- 子どもの教育資金と老後資金のバランス
- 介護に備えた準備
年金制度改正を踏まえたライフプラン
2025年の制度改正により、従来のライフプランニングを見直す必要があります。特に以下の点に注意が必要です。
60代前半の働き方
在職老齢年金の基準額変更により、より多く働くことができるようになりました。2026年の62万円への引き上げを見据えた働き方を検討しましょう。
遺族年金への備え
2028年からの有期給付化に備え、生命保険や個人年金保険での補完を検討することが重要です。
基礎年金の底上げ
将来的な給付水準改善の可能性がありますが、確実ではありません。自助努力による老後資金準備が重要です。
まとめ:2025年年金制度改正で知っておくべきポイント
2025年の年金制度改正は、多くの人にとって老後資金に関わる重要な変更です。以下のポイントを押さえて、適切な対策を講じましょう。
年金額1.9%増額
国民年金は月額1,308円、厚生年金は月額4,412円の増額。年間では国民年金が約1.6万円、厚生年金が約5.3万円の増加。
働きながら年金受給
在職老齢年金の基準額が51万円に引き上げ。2026年には62万円になる予定で、約20万人が恩恵を受ける見込み。
将来への備え
遺族年金の5年有期給付化や基礎年金底上げの検討など、制度変更に応じた個人レベルの対策が重要。
年金制度は複雑で、個人の状況によって影響が大きく異なります。今回の改正内容を理解し、これから先のライフプランに合わせた対策を検討していきましょう。