
子どもの将来のために必要な「教育費」。特に大学進学を見据えると、家計に与えるインパクトは決して小さくありません。今回は教育費の現実、奨学金制度、そして進む「大学無償化」の動向について、子育て世代の皆さんに向けてわかりやすく解説します。
子どもの将来のために必要な「教育費」。特に大学進学を見据えると、家計に与えるインパクトは決して小さくありません。今回は教育費の現実、奨学金制度、そして進む「大学無償化」の動向について、子育て世代(20〜40代)の皆さんに向けてわかりやすく解説します。
教育費はどのくらいかかる?
文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」などの最新データによれば、日本の子育て世帯が負担する教育費は年々増加傾向にあり、特に大学進学を控えたご家庭にとっては家計における重要な支出となっています。教育費は子どもの進学先によって大きく異なりますが、早めに全体像を把握しておくことが、将来の安心につながります。
幼稚園〜高校までの教育費
幼稚園から高校までの間にかかる費用を、公立・私立別に見てみましょう。令和5年度の調査によると、幼稚園から高校まで全て公立の場合は総額約540万円、全て私立の場合は約1,830万円と、3倍以上の開きがあります。これは授業料だけでなく、給食費や教材費、学校外活動(塾や習い事)なども含まれており、都市部ほど負担が大きくなる傾向があります。
教育段階 | 公立年間平均費用 | 私立年間平均費用 | 格差倍率 |
---|---|---|---|
幼稚園 | 約18.5万円 | 約34.7万円 | 1.9倍 |
小学校 | 約33.6万円 | 約182.8万円 | 5.4倍 |
中学校 | 約54.2万円 | 約156万円 | 2.9倍 |
高校 | 約59.8万円 | 約103万円 | 1.7倍 |
このように、私立は公立の1.7〜5.4倍と大きな差があり、特に私立小学校は格差が際立ちます。学校選びや今後の進路に合わせ、教育費の見積もりと計画的な準備が不可欠です。
大学の学費(初年度)
高等教育になると、さらに費用は増大します。国公立大学の初年度納入金(入学金+授業料)は平均約82万円、私立大学の場合は文系で約116万円、理系で約155万円、医歯薬系では300万円を超えることもあります。
区分 | 初年度納入金の平均 |
---|---|
国公立大学 | 約82万円 |
私立文系大学 | 約116万円 |
私立理系大学 | 約155万円 |
私立医歯薬系 | 300万円以上 |
大学4年間の学費総額は、国公立で約250〜300万円、私立で約400〜600万円。さらに自宅外通学や一人暮らしとなると、生活費が年間100万円以上かかることも多く、トータルで国公立でも500万円、私立だと700万円〜1,000万円超になるケースも珍しくありません。
奨学金制度の種類と注意点
給付型奨学金(返済不要)
経済的な理由で進学に不安がある家庭にとって強い味方となるのが、「給付型奨学金」です。日本学生支援機構(JASSO)の給付型奨学金は、2020年度から本格的にスタートし、住民税非課税世帯やそれに準ずる世帯が主な対象です。2025年度からは、世帯年収380万円未満を目安に、支援の拡充が進められています。
私立大学・自宅外通学の場合、授業料等の減免約70万円+給付奨学金約91万円と、年間最大約160万円が支援される仕組みです。これにより、経済的な理由で進学を諦める子どもを減らすことが期待されています。
また、大学独自の給付型奨学金や、地方自治体による支援制度も多様化しており、学力や目的に応じた様々な選択肢があります。支給額や条件はそれぞれ異なるため、進学先ごとに最新情報を調べておくことが重要です。
給付内容の例(私立大・自宅外)
- 授業料の減免:約70万円
- 給付奨学金:約91万円/年
- 合計:約160万円が実質支援される
貸与型奨学金(返済が必要)
JASSOの貸与型奨学金には、「第一種(無利子)」と「第二種(有利子)」の2種類があります。
- 第一種(無利子):成績優秀者向け、返済は元本のみ
- 第二種(有利子):成績要件は緩やかだが、利子が付く(上限3%)
実際、日本の大学生の2〜3人に1人が何らかの奨学金を利用していますが、卒業後の返済負担が家計を圧迫するケースも増えています。「所得連動返還型」など返済負担軽減の仕組みも導入されていますが、借りすぎには要注意です。奨学金は将来のライフプランへの影響が大きいため、必要額や返済シミュレーションを事前に行うことが大切です。
卒業後の返済が重くなるケースもあるため、借りすぎには要注意です。「所得連動型返還制度」も活用し、無理のない返済計画を立てましょう。
大学無償化の動向【2025年最新】
2019年から始まった「高等教育の修学支援新制度(いわゆる大学無償化)」は、2025年度以降さらに拡充されます。政府は「高等教育の修学支援新制度(大学無償化)」をさらに拡大する方向で調整中であり、2025年度からは「多子世帯(子どもが3人以上)」への支援が大きく拡大されます。
制度比較表【2025年最新】
項目 | 現行制度(2025年7月時点) | 拡充予定(2025年度〜) |
---|---|---|
対象世帯 | 年収380万円未満の世帯 | 子どもが3人以上いる多子世帯 (所得制限なし) |
支援内容 | 給付型奨学金+授業料の一部または全額減免 | 授業料等の満額減免支援 (給付型奨学金も併用可能) |
支援金額例 (私立大・自宅外) |
授業料減免:約70万円 給付奨学金:約91万円 合計:約160万円/年 |
授業料満額減免:約70万円 入学金減免:約28万円 合計:約98万円/年 |
申請条件 |
• 住民税非課税世帯等 • 学力・学習意欲の基準あり • 進学先の要件あり |
• 多子世帯(3人以上) • 基本的な学力基準 • 国公私立大学・短大・高専等 |
実施状況 | 実施中 | 2025年度開始予定 |
今後の拡充予定
2025年度からは、子どもが3人以上いる中間所得層(所得制限なし)も一部支援対象となる予定です。この制度により、多子世帯の教育費負担が大幅に軽減されることが期待されます。また、支援を受けるには入学前の申請や学業成績の基準など条件もあるため、早めに情報収集を心がけましょう。
注意点:制度の詳細は変更される可能性があります。最新情報は文部科学省やJASSOの公式サイトで確認することをお勧めします。
教育費を賢く準備する方法
早期からの積立
教育費は「時間を味方につける」ことが最も有効です。子どもが生まれてから大学進学まで18年。毎月2万円を積み立てるだけでも、18年で約430万円(年利0.1%の普通預金換算)。投資信託やジュニアNISAなどを活用すれば、さらに効率的な資産形成も可能です。
教育ローンの活用
急な出費や不足分は、「国の教育ローン」や民間金融機関の教育ローンも利用できます。ただし、借入額・返済計画をしっかり立てることが不可欠です。「教育ローン+奨学金」の併用も選択肢のひとつですが、卒業後の返済負担を見積もっておきましょう。
家計の見直し
教育費を効率よく準備するには、家計全体の見直しも重要です。毎月の支出を洗い出し、固定費の削減や無駄な出費の見直しを進めることで、教育費に充てる資金を捻出できます。また、ライフプラン全体を見据え、住宅ローン・老後資金とのバランスも考慮しましょう。
まとめ:教育費準備の3つのポイント
- 早期からの計画的な積立:少額でも長期間の積立は大きな力に
- 奨学金制度の活用:給付型を優先し、借りすぎに注意
- 家計全体の最適化:支出の見直しとライフプランの明確化